巻頭言                      会長  川村  赳

  この 4 月から本協会は新たな事業年度に入りました。 平成 16 年度は、 本協会の未来展望に当って極めて重要かつ喫緊な節目となるものと思われます。
 その課題の幾つかは、 既に新春号の巻頭言にて触れたところですが、 その一つであった定款の改正については、 本年 2 月 19 日に開催された臨時総会において改めて議決を受け、 直ちに国土交通大臣宛に変更認可申請を行った結果、 3 月 5 日付をもって認可されました。 平成 16 年度は新定款の下で、 会員の総意を結集して自主自律の途を踏み出すこととなります。
 だが、 現下のわが国海運産業を俯瞰するとき、 この進むべき方向は見方によっては全ての団体にとって普遍の道標であるかも知れません。 残念なことですが、 日本船主協会が明らかにした政策課題は、 本号でも情報として取り上げている通り、 国家・国民の目線上に構築されているとは思い難く、 海運発展の歴史的検証を著しく欠くものと言わねばなりません。 その一例として 「第二船籍制度」 について触れるならば、 かつて官公労使が協同して取組んだ船員制度近代化への挑戦が、 長期計画のもと成果を挙げつつあった最中、 1985 年のプラザ合意に起因する急激かつ大幅な円高圧力によって軌道修正が求められた際、 本来なら既に欧州諸海運国で制度化されていた第二船籍の導入がモデルとされたにも拘らず、 フラッギング・アウトによる日本人船員切捨ての方向を選択したのは船主協会でありますから、 今ごろ第二船籍を言い出すのは、 狙いが完了したことを告げる勝利宣言のようなものです。
 しかし、 リストラ、 能力給、 成果主義などが横行し 200 万人を超すフリーターを生み出し、 更に改正労働者派遣法の後押しもあって非正規雇用が増加しつつある国内現況から見て、 極めて分かり易い 1 船単位のコストセーブだけを主目的に日本人船員を激減させた外航大手が、 ここで仕掛けた攻勢が成果なしで幕を引くことはある筈もなく、 3 月には水先特別会費について 2006 年度中の廃止が国交省との間で合意されたようで、 水先の方々の労苦から生み出された特別会費を財源とする補助金等の引き下げや廃止により、 関係諸団体は事業の再構築が課題となるでしょう。 その場合、 海事振興 3 団体のどのような事業計画を国交省が認可するかによって将来の方向性が見えてくることとなりましょうが、 行政や船主協会の価値判断だけで公益法人の存在意義が評価されることは、 何としても避けたい点であります。 本協会はこの背景を正しく分析し、 会員の利益を擁護する姿勢を貫く所存であります。
 幸いにも、 国交省海事局内では新たな外航海運政策の検討に着手したとのことですが、 テロの脅威が海上輸送路に及ぶことさえ危惧される今日、 人材確保と養成が急務である点を十分に踏まえ、 ダイヤモンドグレース号油流出事故を想起し、 安全確保こそ何にも勝る国益との立場で、 方向性を示して頂きたいと念願します。
 ご存知の通りこの 4 月、 5 商船高等専門学校が独立行政法人となりました。 本協会は学校教育法、 船舶職員法の求める教育課程の成就に各校と共に努力し、 卒業会員のウォーターフロントへの入職に奮闘する所存ですので、 宜しくご協力下さい。