巻頭言

                                         会長  川村 赳

  平成の年号になって、 早くも15年の新年を迎えた。 この間、 わが国にあっては、 バブルの残滓を解消することが出来ず、 今なお不良債権、 デフレ不況、 財政赤字の三課題に手をつけるための優先順位を巡って、 熾烈なドラマが繰り広げられている。
 この状況は、 国家的課題として取り組んだ中央省庁再編の課題、 即ち 「官僚主導」 から 「政治主導」 への転換が劇的には実践されていないことを示し、 政治構造の抜本的改革と政治手法や意思決定方法の変革は、 未だ道遠しを思わせる。
 さて、 そこで問われるのは、 これらの現況下で具体的に出されてくる変革の処方箋に、 いかに対応すべきかの方策である。 今、 本協会にとって至近の極めて重要な行政課題は、 いうまでもなく全国に55校 (昨年10月、 沖縄工業高専創設) 存在する国立高等専門学校の独立行政法人化移行の問題である。
 高専は1962年、 学校教育法の一部改正により 「深く専門の学芸を教授し、 職業に必要な能力を育成する」 ことを目的に創設された。 1950年の短期大学設立を契機に、 その後何度となく講和条約以降の教育体系改善の気運として、 適切な産業教育を主張し提言されてきた成果であった。 海運界にあっては、 めざましい船舶の技術革新に対応する教育の充実向上を目的に、 本協会 (旧十一会) が1957年、 「商船高等学校教育内容の向上について」 政府に陳情したことから始まる。 引き続いて5校長連名による文部大臣への上申、 本協会を中心とした専科大学昇格運動を経て高専創設後の1963年に高専昇格運動を開始、 翌64年7月には早くも海技審議会より運輸大臣に 「商船高等学校の教育について」 答申が行われ、 同年末に運輸大臣より文部大臣宛に要望書が出されている。 これを受けて文部省では 「商船高等学校における教育課程等の調査研究会議」 を設け65年3月に報告をまとめているが、 高専昇格を視野においた格調の高い内容になっている。
 この後、 運動は本協会と5校からなる昇格期成連盟を基盤に二度にわたる高専昇格促進大会を東京で挙行、 国会議員による 「昇格促進議員連盟」 の決議も得て、 遂に1967年6月1日、 幾多の障害を排除し5校同時の高専新設が決定されたのである。
 文部科学省は昨年8月、 同年3月にまとめた 「新しい国立大学像について」 の答申を根拠に、 「高専の自主自律を拡大し多様化を図るためには法人化が望ましい」 として、 検討会を立ち上げ討議に入った。 経緯は公開されず審議内容には不明な点があるが、 基本構想の構築は今後の検討を待つこととなろう。 法人化移行の検討課題が主として学校組織の改革と新生にあることを思うと、 歴史の教訓に則り正道を邁進することが必要である。  特に船舶職員教育については、 学校教育法等と船舶職員法等の関わりに細秘な検討を加え、 省益に偏することなく学生本位の見地で未来を切り開かれるよう願う。