富山湾の風景となった若潮丸

―さらなる海の魅力を求めてー

   


富山商船高等専門学校      
練習船 若潮丸
       
  船長 藤重 良二
       


1.若潮丸主要目

船主 文部科学省
船名 若潮丸
国籍 日本
船籍港 新湊
船舶番号 131583
信号付字 JFBI
資格 近海区域,非国際航海
(第四種船)練習船
全長 (LOA) 53.59m
垂線間長 (LPP) 46.00m
幅 (型) 10.00m
深さ(上甲板/第二甲板) 5.40/3.40m
計画喫水 (DESIGN DRAFT) 3.20m
夏期満載喫水(SUMMER DRAFT) 3.37m
国際総トン数(INT. GROSS TONNAGE) 731トン
登録総トン (GROSS TONNAGE) 231トン
純トン数 (NET TONNAGE) 219トン
試運転最高速力 14.13ノット
航海速力 12.50ノット
最大とう載人員 乗組員9 教官3 学生44 計 56人
進水年月日 平成7年(1995)6月19日
竣工年月日 平成7年(1995)9月14日

2.平成14年度 若潮丸 運航予定

4月11日 オリエンテーション NE1
  15日 停泊実習   4E
  16日 研究航海
  18日 オリエンテーション K1
   22日 停泊実習   4E
  23日 卒業研究
  25日 オリエンテーション D1
5月 7日 停泊実習   4E
   9日 卒業研究
  13日 停泊実習   4E
  14,15日 乗船実習  NE2
  16日 オリエンテーション I1

  20日 実験実習   4N
  21,22日 乗船実習  NE3
  23日 卒業研究
   27日 実験実習   4N
   28日〜30日 停泊実習 K1〜K3
  31日 停泊実習   3E
6月 3日 実験実習   4N
  11日 研究航海
  13日 卒業研究

   14日 停泊実習   3E
   17日 実験実習   4N
   18、19日 乗船実習  NE1
   21日 実験実習   3N
   24日 実験実習   4N
   25日 卒業研究
7月 1日 実験実習   4N
     2、3日 乗船実習  4NE
     4日 卒業研究
     5日 実験実習   3N
     9,10日 乗船実習  4NE
   11日 卒業研究
   12日 実験実習   3N
   15日 実験実習   4N
  29日 公開ナビ
8月 3日 公開一般
   6日7日 立山少年自然の家
  29日 研究航海
9月 2日 実験実習   4N
   3日 速力試験、機器調整、他

     4日 救命講習
     6日 停泊実習   3E
     7日 公開小学生
    10,11日 乗船実習   NE1
    26〜10月8日 入渠工事(合入渠)
10月  10日 速力試験、機器調整、他
       11日 実験実習   3N
       15日〜17日 研究航海
       18日 実験実習   3N
       22、23日 乗船実習  4NE
       25日 実験実習   3N
       29、30日 乗船実習  4NE
11月  1日 実験実習   3N
       10日 学校見学
       12,13日 乗船実習  NE3
       16日 学校見学
       19、20日 乗船実習  NE2
       21日 若潮丸実習  K1
       28日 若潮丸実習  K2
       29日 停泊実習   3E
12月 2日 停泊実習   4E
      3日 研究航海
      5日 若潮丸実習  K3
      9日 停泊実習   4E
1月 24日 停泊実習   3E
     27日 停泊実習   4E
     31日 停泊実習   3E
2月 3日 停泊実習   4E
   6日 研究航海

   7日 実験実習   3N

   14日 実験実習   3N
   21日 実習補講
3月  10日 機器点検
    17日 速力試験
3.若潮丸の概要

 平成7年9月に竣工した第四世「若潮丸」(以下,本船)は,「安全かつ快適」であることを基本において建造された。その一つとして乗組員及び乗船者全員の居住区を甲板上に配置し,全居室から船外が見え,両舷に広い内部通路を有していることである。また,誰からも「乗ってみたい」と思われるスマートな船体と,主機関に防振装置を施して振動,騒音の少ない静かで落ち着いた船内環境を有している。
 特徴的な装備として,ジョイスティック操船装置やECDIS等最新の航海機器とCTD観測装置,騒音振動測定装置,汎用の運動測定装置等数種の実験研究機器やGMDSS無線設備等があげられる。
 その他に,人や地球環境に配慮した船体動揺を抑えるための減揺装置や裸足で歩けるチーク材を使用した木甲板,煙突から排出される窒素酸化物を減ずる脱硝装置,1日100人分の処理能力を有する汚水処理装置等も備えた最新の船である。
 本船が活動する富山湾は,冬季日本海特有の北西の季節風が数日間連吹する。能登半島東岸には多くの中小型船が避泊している。また,北東風は古来地元で「あゆの風」とも呼ばれ,風速は10〜15m/sec程度であるが湾奥に向かって吹く風なので海上は大時化となる。そのため,湾奥に位置する富山新港に係留している本船は港内に進入してくるうねりで動揺が激しい。停泊実習でも船酔いする学生がいるほどである。
 従って,本船を利用した航海実習や実験実習その他教科や行事等での利用は,必然的に海上模様が穏やかな4月中旬から11月中旬に集中することになる。

4.商船学科の実習
 本船では商船学科の校内練習船実習(4単位)と3,4学年の実験実習を主に教授している。乗船実習は,何時も船酔いの質問から始まり,返答も「吐く前に風向きをみよ」で始まる。「本船で船酔いしても,航海訓練所所属の練習船で世界一周航海を終え,5年半後の卒業式に望む時は船酔いを心配する学生はいない」と言明するが半信半疑のようである。 
 各学年2回,1学年から4学年まで実施しているこの実習は1学年で船橋当直及び機関当直を経験し,2学年からは各コース専門の教科内容を対象とし,夜間航海も体験する。3学年の前期に行う佐渡島(距離85海里)までの航海はこの実習でもっとも遠い海域である。船酔いのため本船が学生に嫌われる航海でもある。入出港作業のため船首,船尾の作業に雨合羽を着用するとさらに敬遠される。しかし,小木港での短時間の上陸は全員から喜ばれている。4学年ではコース別の日程で行っている。この実習のまとめは航海コースの場合,学生だけで船橋及び船首配置について行う投揚錨操船である。自分たちだけで実行するため各々の役に就いた学生達は水域が狭いこともあって極度に緊張する実習のようである。機関コースの学生も(乗組員が後で確認することになるが)自分たちだけで全ての機器の発動から主機の暖機,トライエンジンまで行い,約3時間の航海で次の港に入港し冷機作業を行っている。
 3学年で実施している救命講習は,実際に救命胴衣を着用して海に飛込み,約300m離れた救命いかだに乗込み再び本船まで泳ぎ着き自力で甲板に上がる等の非常に体力を要するものである。最近,えひめ丸の衝突事故があってから,防火部署に続いて行う退船部署を1学年の実習に早め,説明等も詳細になり時間を要しての訓練となっている。 また,操縦性能試験や海中転落者救助操船等の実船実験データは,直ちに提示することができるので実験の理解に大変役立っている。

5.全学的な練習船の活用
 新入生オリエンテーションとして入学直後の木曜日の午後に,学科単位で体験乗船をしている。それゆえ全学生は,1度は本船に乗船していることになる。初めて大きな船に乗ったという学生が多く早春の富山湾でイルカや鯨を見た時の興奮は,在学中の思い出として強烈に残っているようだ。
 また,本校には商船学科と情報工学科,電子制御工学科の他に高専で唯一の文系の国際流通学科がある。
 歴史の新しい国際流通学科は,100年に及ぶ商船教育の伝統を積極的に取り入れ,海上輸送システムの現場体験で本船は重要な役割を担っている。「天候や海上模様が刻々と変化する海上で行う若潮丸実習は,本や模型にないものを自然に教えてくれる」と話す学生達はよくメモをとっている。彼らの作成したレポートを見ると「こんな言葉で表現したかな?」というものもあるが内容はよくまとまっている。在学中に数回の実習を行うなかで,学生が作る昼食のカレーライスは,海上模様で何時も過不足が生じているようだ。
 海,船を理解しようとする国際流通学科の基本姿勢は年齢に関係なく新任教官にも課せられている。担当科目に拘らず1年間は機会ある毎に体験乗船して身体で学ぶという方法である。そのため,商船学科以外の教官であるが船と自然との対応についての認識を有している。

6.印象に残る航海
 竣工後の航海で想いで深いものは,保証ドックで清水港にある三保造船所への回航で本州一周したことである。新湊港を出港し,北回りの津軽海峡では函館沖から減速しなければならないほどの時化に遭遇,太平洋の巨大なうねりに翻弄されたが,清水港には穏やかな日和に入港した。(航海距離930海里)
 入渠工事完工間近になって,南海上の台風の影響が懸念されるようになったので急遽南回りの海図を補充した。数日後,南回りの航海を決断し四国沖を目指して同港を出港した。相変わらず大きなうねりが続いたが豊後水道を経て穏やかな内海と四囲の船舶の多さに久しぶりに緊張した船橋当直となった。関門海峡を通過し日本海に入った時,台風の心配から開放されたが,隠岐島を通過してから北西の強風と波浪,そして降雨による視界不良のため最後まで何かが起きるのではないかと,緊張は新湊港に帰港するまで続いた。(航海距離948海里)
 その他に日本海海難防止協会との共同研究で,錨地を特定した把駐力の計測をした。計測に慣れるまでに要した時間もさることながら新潟港沖では,計測終了直後25m/sec前後の西風となった。次の計測地直江津港沖にも錨泊できず能登半島の陰に入るまでの8時間,船橋の窓は波飛沫のため真っ白だったことが想い出される。

7.最近のユニークな諸活動
 新造時装備した研究設備を利用し,富山湾で水深1000mまでの深層水の塩分や水温等の隔月観測は,県立大学にも開放し,地域に根ざした研究設備として役割を果たしている。そして,入出港操船等の実船実験,機関室の騒音や振動に関する研究等は有効な成果を収めた。
 さらに,最近新型オートパイロットの開発に向けて航海計器メーカーとの共同実験やアルミ製マリンフロートの開発等海上,海中に関する研究や実験が新たに進みつつある。
 ユニークな活動として,富山大学教育学部からの要請で,将来教諭になる学生の体験航海もした。小中学生に海,船について語ってもらえることに対して,未来に対する確かな手応えが感じられる。このような要請は,本船がいわゆる「科学的な実験設備」としてだけでなく「人間教育としての設備」としても地域から期待されていることを証明している。
 ここ数年,夏季の公開講座等だけでなく海事思想普及の航海を行っている。富山県内の港だけでなく新潟,石川,福井県に入港した航海訓練所所属の練習帆船の行事に合わせ新潟港,敦賀港で本船も一般公開を実施した。
 予想を遙かに超える多数の見学者が訪れ,練習帆船と比べて小さな船ではあるが,その存在価値は年々大きくなりつつあると自負している。本年7月石川県で開催される第17回「海の祭典」行事にも参加を予定している。
 そして,学校週5日制が実施される来年度から,小中学生に対して本船はどのような活動ができるかについても検討している。
 本校学生の授業以外に,本船の体験航海等を要請されるが,夏季に集中するので関係行事との調整に若干苦慮しているのが現状である。