初代帆船海王丸の
   大規模修繕工事について


                              (公益財団法人)伏木富山港・海王丸財団 
                            常務理事・帆船海王丸船長 斎藤 重信

           
はじめに
「海の貴婦人」帆船海王丸は今年(平成25年)2月で建造から83年を迎えました。
海王丸パークから見る海王丸はとても美しいのですが、海面より下の部分は簡単に修理できないため、長い間十分な整備ができませんでした。
今回、富山県そして射水市のご支援により、昨年11月下旬から今年の3月まで、3か月にわたる大規模な修繕工事で、平成9年度以来15年振りの定期検査のための入渠・上架修繕工事(海王丸の船体を水から出し、船底の保守などを行うこと)を実施することができましたので、その概要をご報告させていただきます。

大規模修繕工事までの経緯
海王丸の保存活用事業の実施に当たっては、富山新港への係留当初(平成2年)から、建築基準法を適用する海洋構造物(建築物)としての係留船か、船舶安全法を適用する船舶としての係留船かという議論がありましたが、現状は係留が常態の動態保存される平水区域を航行可能な練習船となっています。
不特定多数の客が乗船するため、船舶検査上は客船扱いであり、第1種中間検査を毎年受検する必要があります。定期検査は5年毎ですが、これについては経費節減策として船舶検査官と協議の上、入渠・上架による検査は緊急の必要性が生じない限り省略をお願いし、係留場所での水中検査を実施してきました。
平成19年冬から船尾船底軸室部で浸水(海水15L/週)があり、外板板厚計測による建造当時の外板衰耗率30%超を確認し、また船体中央部(機関室)に海水が長期間滞留していたためと思われる強度の腐蝕(最薄板厚2.4mm)も確認したため、平成20年度の定期検査では全てのコファダム(タンクとタンクの間の空所)内検の指示を受け、そして今回は全てのタンクを内検する必要もあって、本格的な船底修理とあわせ「上架」が不可避の状況となったわけです。
そのような状況から、平成23年9月、本会議を再開した富山県議会において、石井隆一知事は四方正治議員の代表質問に答える形で、射水市の伏木富山港(海王丸パーク)で一般公開されている帆船海王丸について、次年度(平成24年度)の船舶安全法で義務付けられている定期検査に合わせて、船底修理など本格的な修繕を実施する意向を示しました。
射水市では、国が建設中の新湊大橋が平成24年秋に完成予定で、知事は答弁で、「立山連峰と富山湾を背景に、海王丸と新湊大橋が並び立つ景観が生み出され、観光スポットとして魅力が高まる」と指摘し、同市からも要望があったとして「全国の人に愛されるよう修繕を行う方向で検討したい」としました。

大規模修繕工事の実施概要

@工事名   帆船海王丸の定期検査及び上架修繕工事
A設計金額  ¥427,326,860円(税込)
B契約額    ¥423,150,000円(税込)
C契約日   平成24年 9月27日
D完成期限  平成25年 3月19日
E入渠日   平成24年11月27日
F出渠日   平成25年 3月 7日
G請負者   新日本海重工業株式会社



船首部(入渠時)             船首部(出渠時)
 

船尾部(入渠時)              船尾部(出渠時)
 

機関室フレーム(補強前)          機関室フレーム(補強後)
 

タンクトップ(補強前)           タンクトップ(補強後)
 
          
船底外板(補強前)             船底外板(補強後)
 
          
                船底外板の破孔部(両舷)    
        

                船底外板の補修部(両舷)
         

まとめ
(100歳になっても「海の貴婦人」として)

@「百寿を無事迎えられるように」を合言葉に、平成9年度以来15年振りの大規模な定期検査入渠・上架修繕工事を3か月にわたって実施しました。
A昨年11月末に新日本海重工業鰍ノ入渠した時は、貝殻や海草類そして錆だらけで本当に痛々しい姿でした。
Bそれを1か月かけて、船底全面のカキ落としとサンドブラスト、プライマー塗装を行ってきれいにし、外板の500か所に及ぶ板厚計測や打音検査などの結果から12月中旬に外板の修繕方法を決めました。
C厚さ8o、2.5m×10mの高張力鋼当て板材を10枚以上使用し、外板の破孔や腐食の進んだ部分の補修などを行いました。
D現在では数少ないリベット船ですが、左右あわせて痛んでいる4,500本のリベットのうち、特に痛みが激しい1,000本を肉盛りして修繕し、残りの3,500本についてはこれ以上腐食が進まないように、外板部も含めて厚さ約2oのポリウレアコーティングを船底部の50%に施し保護しています。
E腐食が進んでいた機関室フレームの切替えやマージンプレート、タンクトップの当て板補強など、タンク内部も含めて船体内部の補強や塗装も入念に行いました。
F電食と思われる船底外板の破孔が数カ所見受けられたため、電食対策として船体外部に防食アルミ(10年仕様)60基を取付けました。
G「海の貴婦人」と称され富山県民・射水市民はもとより、国民に愛される現在83歳の帆船海王丸ですが、100歳になっても元気で美しい姿をお見せできるように、乗組員一丸となって整備を行い、輝かしい歴史と伝統を持つ海王丸を大切に保存・活用し、多くの人に船や海の魅力を伝えていきます。
皆様の引き続きのご協力と、温かいご支援をお願いします。        (了)

(帆船海王丸のwebは、「海王丸パーク」で検索して下さい。facebookもあります。)