商船高専校長が学校の現状について報告
校長との懇談会を本部で開催



                                    事務局長 七呂 光雄 
 全船協は、毎年1回商船高専校長と役員との懇談会を行っていますが、今年も2月3日(金)10時から12時過ぎまで本部会議室で開催しました。
私達が卒業した商船高専は、数年前から学校統合や入学生減少等の色々な課題を抱えています。
 全船協では、これらの課題について学校との意思疎通を図るために、各学校校長との懇談会だけでなく商船学科長との懇談会も毎年実施し、これらの両懇談会では、本音に迫る話がでており、お互いが理解するのに非常に有益な懇談会となっています。
 今回の懇談会の内容について、会員にも知っておいて貰いたい事項に絞って、次の通り報告します。

Ⅰ 出席者(敬称略)
学校側 富山高等専門学校長  米田 政明
鳥羽商船高等専門学校長    藤田 稔彦
広島商船高等専門学校長    村上 定瞭
大島商船高等専門学校長    久保 雅義
弓削商船高等専門学校長    落合 敏邦
全船協 会   長 内田成孝(大島)、副 会長 松坂武彦(富山)、
     専務理事 本望隆司(富山)、常務理事 相川康明(広島)、
     常務理事 吉田  堯(弓削)、常務理事 岩田仁(鳥羽)、
     事務局長 七呂光雄(広島)
Ⅱ 校長からの説明要旨
(1) 瀬戸内3商船高専高度化再編の現状について
1 平成18年各校へ要請文書が出された後、動きはないが、平成22年度の第4回目になる最終会議が平成23年9月開催された。
高度化再編については、無理をすれば問題が生じるかもしれないが、学生募集や色々な企画で協力できることもあるので検討を続けていく事になっている。
2 平成23年度第1回会議が昨年11月に開催され、瀬戸内3校は、事前協議も踏まえながら申し合わせ事項の中に「強い連携」という文言を書き入れた。既に具体的には、「最寄り地受験」、「複数校受験」や「募集活動」を行っているが、23年度は、これらを整理して24年度に向けた最終会議では、「強い連携」として具体的な纏めを行っていきたいと思っている。
3 練習船の共同利用について文部科学省が中心となってアンケート調査等が行われてきたが、後は動きがなく、したがって瀬戸内3商船の練習船の活用に関する専門部会の会議は1回も行なわれていない。

(2) 瀬戸内3校の連携プログラムについて
1 再編統合となれば3校が同じような内容のキャンパスというわけに行かないので、まず最初にコアカリキュラムを立てて、コア以外の部分で各校が特色を出していくという基本的考えを3年前に立てた。
2 コアカリキュラムの形が1年半位かけて出来上がったが、商船学科については富山高専遠藤先生が中心となって3校だけでなく5校全体で進める事にしていてコアカリキュラムの骨格は決まった。
3 高専機構からも、コアカリキュラムの案が決まっているなら報告書を出すように言われており、大島商船岩崎先生から5校を代表して提出する予定となっている。

(3) 「ALL SHOSEN」学び改善プロジェクトについて
海運界が従来の海運界と違ってきたと思って「海運界との共同教育による海事連携プログラム」を2年前スタートし、人材を送る立場の学校としてミスマッチングが起こらないように日本船主協会や愛媛の船主等を訪問して協議を進めてきたが、確かに過去と比較して様子が変わってきたと考えている。
当初瀬戸内3校で進めてきたが5校で進める事になっており、学校だけでなく船主協会、全船協も加わった運営委員会等で商船学科学生に何を、どのように学ぶべきか道筋を示すと共に、学びの定着を促す良いコア教材の開発(専門科目教材、TOEIC対策等の英語教材)、国際交流、フォーラム開催等に取り組んで海運界の要望に応えられる人材育成を進めて行く。(【注】本プロジェクトについては、会報117号に掲載)

(4) 国交省に設けられた「船員の確保育成に関する検討会」の内容について
1) 優秀な船員志望者の確保について
 1 学校側から「海技者に必要な英語教育の目標」を示して欲しいと要望した所日本船主協会から「海技者としての資質」について、次の事が示された。
① 会社の経営を担う気概を持った学生の養成
② 基本的なコミュニケーション能力 特に上下関係
③ TOEIC500点の英語能力を持つ事
④ 海技者としての資質教育
⑤ 操船・機関に関する基礎教育
⑥ 船内生活適応と精神力 
 2 これらの船主協会の要望に従うとなれば、どのような課題や対応事例があるか検討を行なったが、学校のカリキュラムは、船を動かすことに集中しており、会社経営を自分が担う気持ちを持つために、会社経営、運賃収入、建造費などについての教育は一部やっているが、その他の学校はゼロに近い状態である。しかし東京海洋大は、1週間に1回やっていると聞いているので、WEB会議システムで配信してもらいたいと船主協会にお願いをしている。また、基本的コミュニケーション能力を上げるために、機会を作る必要があるとして、船主協会を通じて海務部、工務部、港湾荷役、代理店等の協力を依頼している。
2)英語力の強化について
 1 英語力を如何に高めるかという事が商船高専生の大きな課題となっており、TOEIC 500点を目指す為、フイリピンのMAAP(注 商船大学だが研究は行わず、技術教育中心、また学生の年代も高専並みの学校)と協力できないか詰めていく予定で、同大学に、寮設備があれば更に進めやすいと思っている。
授業として取り組む事は不可能なので、夏休みや春休みを利用して行わなければならないが、また、それとは別にハワイのカウアイ・コミュニティ・カレッジ(KCC)との連携も進んでいる。
 2 英語力を高める事は、学校として商船学科だけでなく全ての学科の取組として対応しているが、高レベルの海技免状取得と高得点のTOEICを持った学生を育てるためには、志願者倍率を上げて優秀な学生を確保することが重要だが、現状では、学校の志願倍率が上がりつつある。
3)乗船実習の見直し
船員を希望しない学生や陸上に就職するためモチベーションの低下した実習生への対応など乗船実習制度の改善策として、乗船制度を変更し低学年の夏休みに1ヶ月、4年後期と6年前期に5ヶ月または6ヶ月として、行っていきたいと考えている。
実施を開始すれば最初の2年位は不規則な状態が続く事を覚悟しないといけないが、3年すれば定着すると思われる。
4)長期実習下船後の口述試験の改善
練習船を9月前半に下船しても乗船履歴は9月30日迄乗船となっているため10月以降でないと受験ができないという口述試験の改善をお願いしている。
改善方法としては、「卒業見込」という制度を取り入れてもらう事を考えているが、9月中に受験できれば、学校としても教育指導できるだけでなく、国家試験受験者も増えて国家的見地からも良い結果となると考える。
5)社船実習
航海訓練所の練習船に代わって社船で実習する制度が既に設けられており、現在社船実習が可能な船舶は130隻程度あるが、今後隻数が増えて高専、大学の学生に十分対応できると聞いている。
実習船舶の航行区域は、遠洋区域となっているが、緩和した航行区域が設定されたり、1度指定した遠洋区域まで乗船すれば、その後は内航等の実習でも可能となっている。また、実習船舶の教員の要件として、一級海技士を保有する船長・機関長を必ず配置することを求めているが、これを同海技資格を保有する一等航海士・機関士クラスまで幅を広げることになる。

【全船協より】全船協から、社船実習では無線講義ができないので、無線従事者証明が得られない事、アデン湾を航行する船舶は、除外されている事、1ヶ月未満の乗船で転船すると履歴にカウントされない等社船実習会社側からの問題点がある事も指摘した。

※【参考】国土交通省海事局では、近年、海運業界が船員教育に求めるニーズ(船員の資質・即戦力の強化)の変化、独立行政法人改革など、船員教育訓練を取り巻く情勢が大きく変化していることを踏まえ、昨年5月に、有識者、船員教育・訓練機関、海運事業者、関係団体及び国(国土交通省、文部科学省)で構成する「船員(海技者)の確保・育成に関する検討会」(座長・杉山雅洋早稲田大学名誉教授)を設置し、船員(海技者)の確保・育成について、各5回の外航部会及び内航部会における業界ごとの詳細な検討並びに3回の全体会議における全般的検討を行った結果、今般、報告書のとりまとめを行った。
詳細については、国土交通省の海事に関するホームページに掲載されている。