巻 頭 言

            船員(海技者)の確保にはPDCAの確立を!
                                       会長 内 田 成 孝

 新たな年の幕開けにあたり、日夜活躍されている会員の皆様に謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
  この1年を振り返ると、国内的には東北地方を襲った大地震と大津波、そして福島原発の放射能漏洩事故と大激震の年であった。また、この非常時に重要な使命を持って活躍した日本海運を通し、日本人船員の重要性が再認識された年でもあった。
 一方国際的には、米国の景気停滞や、欧州の金融不安から政局不安へと繋がり、さらなる円高の圧力が強まっている。外航海運・内航海運共に三角波に飲み込まれ海運景気が一気に下降線をたどって厳しい経営を強いられている。この不況と相まって、新船員(海技者)の内航・外航海運への就職が大変厳しい状況にあることは由々しき問題である。
 今年は、嵐の後の凪を信じ、地震・津波跡の復興への槌音と、海運界の隆盛を念じる次第である。  新年に当たり思う事は、海を目指し、夢を持った若人が船員教育機関の入学を選び、長い年月の教育訓練を受けながら希望の進路が閉ざされている現実は何なのか、全船協として新たに巣立つ優秀な卵に希望を与えることは出来ないのかということである。 交通政策審議会で長きにわたり検討され、極限まで減少した外航日本国籍船の回復と、日本人船員の確保と育成に向けた方策「日本国籍船を5年で2倍、日本人船員を10年で1.5倍に増加させる目標」が示された時は、船員を供給する教育機関では、卒業後の就職に船員の道が開ける光明を感じたと思う。ところが、原石を求めるより、仕上がった宝石を求める外航海運への道筋は大変厳しく容易には進めなくなっているのが現状である。
  海事教育等に関する政策については、今まさに「船員(海技者)の確保・育成に関する検討会」が佳境に入っている。しかし残念ながら船員の質の論議はあるが、まだ量の論議は行われていない。船員の減少に歯止めがかかっていない現実を直視し、船員(海技者)の確保=外航海運界への就職と捉え議論を深めてほしい。内航海運も然りである。
  【日本船主協会、国土交通省海事局資料によると、<外航日本国籍船舶・日本人船員>は2008年(200隻・2,621人)、2010年(246隻・2,256人)となって、2年間で日本国籍船舶は46隻の増であるが日本人船員は365人の減であり、船員の確保増には至っていない】
 国際競争力条件の均衡化「トン数標準税制の拡大・承認船員制度の拡大」に加えて、外航海運事業者の自発的な取り組みのみで、果たして日本人船員を増やしていくことが出来るだろうか。有能な卵が生まれてもそれを孵化し、育て上げる場が無ければ早晩「海のDNA」が損なわれていくことになるのではなかろうか。外航海運事業者は同じ土俵の中にある海事クラスターの海技者を供給する貴重なソース源でもあるはず、卵を温め海技者として孵化させてほしいと心から思う者は教育関係者、海事クラスター関係者等の多くが望んでいるところである。国としても制度として確立した海技者の確保対策にはPDCAサイクルを機能させチェックと対策を押し進めていただきたい。絵に書いた餅にならぬよう……。