水戸市高齢者クラブ連合会における講演報告 
 

                            (社)全日本船舶職員協会 理事 
                                  海事補佐人 田中 善治
 

はじめに
 私の小学校6年生のときの担任は、 赴任したばかりの当時24歳の山川先生 (男) だった。 たった1年間の担任であったが、 先生から直接指導を受けた記憶はあまりない。 それは、 赴任早々、 当時はまだまだ不治の病と思われていた肺結核に侵されてしまい、 授業日数のほぼ半分しか登校されなかったからである。 でも、 最後の卒業式には病を押して登校され、 校歌を始め一連の斉唱のピアノ伴奏をしてくれた。
 この山川先生には小学校を卒業以来お会いしていなかったが、 何かにつけて思い出す気になる存在だった。 先生の持つ人間力なのかもしれない。
平成21年6月、 ふとしたことから59年振りに先生にお会いすることができ、 昔話で盛り上がった。 先生は山形市から水戸市に移住されていた。 そして8月、 先生から水戸で講演してくれないか、 と電話があった。 先生の多くの教え子の中でも船員になったのは珍しいのであろう。
 今年82歳の先生の名刺をいただいて驚いた。 ○○会長、 副会長、 ○○実行委員などの肩書きの中の一つに 「水戸市高齢者クラブ連合会会長」 というのがあり、 これは昭和38年設立の単位クラブ数144、 会員数6,800名の組織である。 講演は第17回水戸市高齢者クラブ女性委員会代表者約400名の研修会の一環で、 勿論男性も多数参加するということだった。
 9月8日、 山川会長より全船協川村会長あてに講師派遣依頼の書状があり、 この申出を受けることになった。
 尚、 出講に当たって、 当協会と当協会が加盟している NPO 法人 SEILA (セイラ) の事業内容および目的が共通していることから、 セイラと連携して派遣するということにし、 山川会長の了解を得た。

講演の準備
 このイベントの事務局は水戸市役所 高齢福祉課内にあり、 打合せや手続き・準備は全て同課の菊池さんを中心とした職員で進められた。 9月初旬、 山川会長へ提出した講演カリキュラムが承認され、 それに沿って準備した。
 私が用意した資料は A4版6枚と、 いろいろな船やパナマ、 スエズ両運河を写した CD1枚である。 映像を映すプロジェクターとスクリーン、 世界地図、 マイクなどは菊池さんにお願いした。
 講演は11月24日 (火) 10:00〜12;00、 場所は茨城県立県民文化センター 小ホール。 前日の23日、 私は NPO 法人セイラの飯田氏とともに水戸駅前のホテルに投宿した。

講演当日
 09:00タクシーで飯田氏と千波湖畔の文化センターに向かった。 会場では菊池さんと数名の職員の皆さんが準備の最中で、 私もそれに加わった。 すでに入場者の受付が始まっていた。
 聴衆は約400名。 定刻になり司会者のオリエンテーションからスタートした。 山川会長は 「会長あいさつ」 の中でユーモアを込めて私を紹介してくれた。
 講演時間を105分頂いているので途中数分間の休憩時間を入れた。 前半では 「船が日本を支えている」 というテーマで、 輸出入に携わる貨物船と船員を理解していただくことに主眼を置いた。 話に合わせて各種船舶を映像で紹介した。
 後半は海上生活のあれこれを聴衆との質疑応答で進めた。 女性が多かったこともあって 「トイレや風呂は?」 「船内生活で楽しいことは?」 「女性船員はいるか」 などの質問があった。
 私の話が終わるとすぐ、 山川会長が選曲されたという唱歌 「里の秋」 を参加者全員で合唱した。 そのあと役員の方から大きな花束をいただいた。

感想文
 後日、 山川会長と菊池さんから礼状と共に多くに感想文と写真を送っていただいた。 折角書いていただいた貴重な感想文なので全部をご紹介したいが、 誌面の都合で一部のものに限らせていただくと共に、 内容についても講演の内容に直接関係しない箇所や、 他と重複するような部分は割愛させていただくことをご了承願いたい。

田中サナエ (稲荷第二地区代表)
 今回の講演の演題は 「船長の肩振り」、 女性委員研修とどのような関わりがあるのかな? 「肩振り」 とはどういう意味なのかな?曖昧な、 漠然とした気持ちで臨んだ当日でしたが、 講演者手作りの資料を見て、 海上輸送なんて未知の領域だし、 面白そうだし、 期待できそう!と思ったのが第一印象でした。
 果たせるかな……山川会長による 「講演者との出会い」 の導入部分の話しに会場の雰囲気が一気に和らぎ、 続いて講演者自らが商船学校入学に至るまでの経緯に感動しました。 田中氏の講演は映像を駆使して解りやすく、 しかも豊富にユーモアを交えた話で、 私にもよく理解できました。
 貿易量の99%は船に依存しているという事実、 積載量の多さ、 日本の造船技術の高さ、 更に驚いたことは大型オイルタンカー (東京タワーの高さと同じ) 等々の乗組員はたったの20人。 加えてマヨネーズ大匙一杯を海水に流すと風呂桶12杯の海水で薄めないと元の海水には戻らないという事実。 これらを知ることが出来ただけでも有意義な時間でした。
 今後、 野次馬的ではあっても、 船、 海上輸送に対する興味が持てると思うと、 貴重な時間を戴いたことに感謝すると同時に……。
 本当にありがとうございました。

関沢みす (西原長年会)
……中でも印象的だったのが、 親に頼らず自分の進む道を決め、 国立富山商船高等学校に入学・卒業して就職したことです。 この話は、 高齢者クラブの人達はもとより、 水戸市の中学、 高校の生徒達に講演してもよかったのではないかと思いました。
 日本は 「衣・食・住」 に必要なものをほとんど外国から輸入している。 そしてわが国海運はこうした海外からの貿易物資の安定輸送に大きな役割を果たし、 トン数で99.7%占めており、 飛行機は0.3%、 この数字を見て、 海運はわが国にとって不可欠な輸送手段であることがわかりました。
 船内の生活は皆さんで協力しあい 「心の絆」 を大切にし、 船長として特に、 家族からの連絡、 手紙などがあまり来ない人達には温かい心で接するようにしているとのこと、 このような人のお陰で私達は安心して暮らせることをありがたく思いました。
 ユーモアたっぷりにお話が上手で、 いつの間にか私も身を乗り出して聞いていました。 又、 次の機会がありましたらお聞きしたいと思います。

正村 稔 (94歳、 小・中・高校勤務40年、 喜楽会第一)
 女性会に出席すること違和感を感じていやだった。
 出席して、 面白く拝聴して 「大もうけ」 した。
 充実感にひたり帰宅してからもルンルン気分でした。
 山川 庫様との師弟愛に感動!
 田中船長さんの豊富なご体験を単に耳から伝えるだけでなく CD によりきれいな画面で視覚によりアッと驚くように話される。
 後半に船長さんの制服で現れたのでびっくりするやら、 嬉しくなるやらでした。
 白い手袋、 4本の腕章には威厳を感じます。
 講演会場の近くに380mの千波大橋があるので船の大きさも想像されて理解しました。
 この近くの他の団体等でご講演されるときは又参上してお話をお聞きしたいと思います。
どうぞご自愛の程を。

塙 富江 (飯富地区女性委員代表)
 今回の女性委員研修会には、 思いもよらずすばらしい講演に出逢うことが出来、 これも又、 山川会長さんのすばらしい着目に感心させられました。
 講師の田中善治氏との若かりし頃の信頼と努力の賜の涙ぐましい出逢い、 そして再会に至るまでのドラマのような感動の末の今回の催しに深く深く感動致しました。 ……
 日本の乏しい資源の立場、 外国との輸送手段としては海運は飛行機と違い、 トン数ベースでは不可欠な輸送手段であり、 それには海上生活の大変さ、 運河を通過する技術等世界との交流まで事細かに、 質問まで交えて船内での生活面や家庭との連絡等などおもしろおかしくお話下さり、 すばらしい頭脳の良さを感じつつ、 今までなかなか聴けない知識を本当にありがとうございました。 感謝します。

大竹初美 (連合会女性委員副代表)
 田中先生の講演は、 私主婦業で狭い視野に生きてきましたゆえ、 大変に学ぶことができました。 輸送の役割、 輸出入、 資源の乏しい日本を守るため命を賭けた男のドラマを現実に見て聞くことが出来感動しました。 特に汚染について、 もう一度自分の生活を見直す必要性を深く感じました。 お勝手で流しの前に立つたびに水を汚さないように気をつけ、 汚れたものはペーパーでぬぐい取ってから洗うように心掛けています。 ……
 これからの日本を背負って立つお子様達に、 若い世代にすばらしいご講演をされますことをお願いしてお礼の言葉とさせていただきます。

杉山さた (水戸市高連女性代表)
 充分資料を用意され、 海上輸送の役割、 海洋汚染、 船の種類、 船内生活のあれこれ、 パナマとスエズと順を追って説明された。 主要資源の大部分は海外からの輸入である。 船は輸送の安定に大きな役割を果たしている。 日本は輸出入の差の3兆円で暮している、 海洋汚染が進んでいる、 すぐれた造船技術を持っている事等を知った。 白い手袋は海上での指示に役立つ。 制服の4本の金線は管理体制の一番わかり易い方法である。 運河の水深を上手に利用して段階をふんで上流へ移動したり、 遠回りを避ければ費用が安上がりだ。 以上の様な事が良く理解できた。
 時々質問の時間を取ったり、 映像を大きく写して船の大きさをアピールされた。 船長さんの制服の着替えのタイミングが良かった。 船上の生活は長期になる時もあり、 例えば洗濯は足でふみ洗いをしながらお風呂にも入ると云う様に合理的であった。
 山川会長とは実に短い期間のふれあいであったがその師弟愛の深さには感動しました。 日頃知らない世界の勉強が出来ました。 本当にありがとうございました。