晩餐会に出席して

                            山本 徳行
                        
全船協関門支部長
                        広島商船高専校友会長(N-52)
                        (在北九州スウェーデン名誉領事)


 
桜の開花が報じられた絶好の季節、 平成19年3月26日スウェーデンのカール16世グスタフ国王とシルヴィア王妃が国賓として来日され、 翌27日ホテル・オークラ東京に於いて、 天皇・皇后両陛下をお迎えし国王・王妃主催の答礼晩餐会が聞かれました。
 私は光栄にもスウェーデン名誉領事として晩餐会に招待され燕尾服の正装で、 家内は和装で出席しました、 皇太子殿下、 秋篠宮同妃両殿下をはじめ皇族の方々、 安倍総理大臣ご夫妻、 日本政府の要人や各界のお歴々が陪席され会場は華やかな雰囲気でした。

 スウェーデン方式とでも言いましょうか、 ウエルカム・ドリンクは別室に用意され、 次々と来場される招待者とグラスを傾けながらの懇談の場となっていました。 私は早めに入場し久し振りにお会いするスウェーデン外務省や元駐日大使、 大使館員等、 旧知の面々と懇談しました。 多数の知人と杯を重ねましたので、 正式な晩餐会が始まる前に酩酊するのではと心配しましたが、 時間が経つに連れ、 徐々に緊張感が解れ安心しました。

 晩餐会会場入り口では天皇・皇后両陛下を真ん中に国王・王妃が両脇にお立ちになり、 旧知の元駐日スウェーデン大使の紹介でお出迎え頂き感激しました。
 国王と王妃には握手をしてご挨拶をしましたが、 さすがに両陛下には手を差し伸べることが出きませんでした。 しかし、 両陛下から笑顔で歓迎のご挨拶を賜りました。 特に美智子皇后陛下の笑顔は格別で、 優雅な佇まいと優しい声音のご挨拶には心から感激しました。 皇后陛下は体調が思わしくなく公務をお休みになっていると報道されていましたが、 お顔の色も良く、 お見掛けはお元気そうで、 安心しました。

 晩餐会は全員がテーブルに着いた後、 スウェーデンの習慣として、 国王自らグラスを鳴らし答礼のご挨拶をされ 『スコール、 乾杯』 のご発声で始まりました。
 一段落して、 天皇陛下がお立ちになり、 簡単な謝辞をお述べになって 「スコール」 の返礼の乾杯で食事が始まりました。
 メイン・テーブル中央にはスウェーデン王室の王冠を模ったデコレーションが飾られ、 国王のお隣に美智子皇后陛下、 向かいの中央の席には天皇陛下とシルヴィア王妃が着席され、 隣席に皇太子殿下と王室女官長、 秋篠宮殿下、 国王の隣席には秋篠宮妃殿下の紀子さま、 皇后陛下のお隣にスウェーデン外務大臣と豪華な顔ぶれがお揃いでした。

 料理はスウェーデン風の正餐で、 魚は国王が本国から持参されたサーモンを随行の王室コックが調理したもので、 メニューによると 「Salmon Carl XVI Gustaf」 でしたので、 私は国王との歓談の際 「King’s Salmon をありがとうございました」 と冗談を交えお話しました。 因みに、 肉料理は神戸ステーキでした。
 私は最近、 食欲が減退していましたが、 素晴らしい雰囲気のせいか全ての正餐を美味しく頂きました。

 私にとっての圧巻は晩餐会を終えて歓談の会場へ移ってから、 天皇陛下、 国王をはじめ皇太子殿下や皇族の方々、 多くの要人と歓談したことです。

 ブランディ・グラスを手に、 先ず安倍総理ご夫妻にご挨拶しました。 総理は場所柄か、 とても明るく元気そうでしたが、 昭恵夫人は笑顔の中にもお疲れの様子 「公務多忙で大変です」 と仰っていました。
 次いで、 駐日スウェーデン大使、 旧知の元スウェーデン駐在の日本大使、 扇千景参議院議長、 緒方貞子 JICA 理事長などの要人に次々とご挨拶し皇族方がお集まりの会場に移動して天皇陛下、 皇太子殿下、 秋篠宮殿下と紀子妃殿下や他の皇族の方々にもご挨拶を申し上げました。
 島津貴子皇女とは20年来の知己で、 ご主人とご一緒に歓談し、 家内を入れて写真を撮影しました。 皆様とても気さくに対応していただき、 身に余る光栄に浴し感慨無量でした。

 シルヴィア王妃と美智子皇后陛下は多くの方に囲まれて歓談が続いていましたので、 私はご挨拶を交わすことを遠慮しました。 グスタフ国王にお会いした時は丁度シガーを喫煙中で、 気さくにケースから葉巻を取り出し私にも勧めて下さいましたが、 ヘビー・スモウカーの私も流石に立場を弁えて辞退しました。
 国王には先ず晩餐会招待のお礼を申し上げました。 国王は長崎への旅行が予定されていましたので、 スウェーデンの植物学者ツュンベリーがオランダ人として来日し、 江戸中期、 出島のオランダ商館で商館医として勤め、 参勤交代に同行し日本各地で植物採取をして標本にしたことなど、 彼の功績をお話したあと、 ご一緒に写真を撮りました。 自然体の国王の笑顔がとても印象的でした。

 晩餐会に出席して感じたことは、 王室・皇室の方々は、 笑顔を絶やさず、 正餐を食し、 多くの来客との歓談等、 想像を絶する努力が必要で、 通常の気力・体力では熟すことは不可能だと思いました。 頻繁に催される公式行事を滞りなくお務めされるには、 体調を整え、 気力を充実し体力を養うことが必要で、 私の常識では想像することが出来ません。 王室・皇室の方々の行為に敬意を表すると共に、 尊敬の念を強く抱きました。 改めて、 私は日常の私生活の見直し、 心身の鍛錬を疎かにしないようにと肝に銘じました。

 晩餐会は19時から開始され、 天皇・皇后両陛下が会場を後にされたのは23時を廻っていました。 両陛下には、 お疲れ様でしたと心から労い申し上げました。

 私はスウェーデン名誉領事を拝命して、 やがて20年になり数回に亘るスウェーデン王室への訪問、 北極星勲章の受章など諸々の貴重な経験をしてきましたが、 この度の晩餐会は私の人生にとって最高のイベントであり、 言葉に表せない素晴らしい体験でした。
 この世に生ある限り、 心身を鍛錬し健康に留意して、 今の幸せをいつまでも味わい続けたいと願っています。 又、 世のため人のために可能な限り尽力し、 一人でも多くの人から尊敬されるような好好爺になるよう努めたいと意を決しました。

     

平成19年3月30日