巻頭言
           我々がなすべき事
 
                                      常務理事 猿 渡 國 雄

 日本は四面を海に囲まれ、 海からの恵みや海外からの食料・資源の輸入、 製品の輸出に関わる海上輸送は、 正に国民生存のライフラインである。
 大多数の国民は、 「日本は海洋国家」 だと思っている。 しかしそれは当を得ているのであろうか。 明治以降、 国家や起業家の努力により、 海運・水産業界に多くの国民が從事し、 海洋国家の地位を確立したが、 プラザ合意以降、 急速に国際競争力を失い、 遠洋漁業による漁獲は、 その殆んどを日本人の教えた技術により外国人が行なっている。 そして、 外航船の海上輸送に従事する日本船舶は、 現在100隻を割り込み、 かつては5万7千人いた船員も今では僅か3千人余りである。
 現在、 日本においては、 国費を使い教育を受けた船員希望者がいるにもかかわらず、 コスト論だけで採用せず、 好況による莫大な利益を背景に、 東南アジアに学校を作り、 フィリピンにおいては大学まで作って船員を供拾している事を関係者以外誰が知っているであろうか。 そして更に、 最近の中国の経済発展にともなう貿易量の増大のため、 社会体制や価値観が違い、 国内における猛烈な経済格差のある中国にまで学校を作り、 沿岸部の者は船員になりたがらないとの理由から、 内陸部の若者を教育して船員を養成しているとの事である。
 この現象は、 かつての日本企業の海外進出による産業の空洞化や技術流出と酷似し、 海技の流出・空洞化を招き、 近い将来、 日本海運の衰退に繋がることは明白である。 現在は海外へ進出していた企業も、 技術を習得した外国人が会社を起こし、 新たな競争相手となったため、 更に技術進化が可能な企業は、 新しい技術の流出 (盗用) に危惧を感じ、 国内に回帰している。
 日本の物資の99%を海上輸送に頼っていながら、 船舶と船員の95%を外国に依存していると言う異常な現実を国民に知ってもらい、 ただコスト論だけでは、 日本人船員及び船舶が無くなった場合の物資の安定輸送・国民の生存・安全保障等に重大な影讐がある事を理解してもらわなければならない。
 この事については、 国民への理解の方法等、 皆様と大いに意見を交換し、 積極的に論じ合うことが必要なのではないかと思うのです。